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vol.07「クリスマスイブの無謀」
3月5日、坂本サトルの3rdアルバムが遂に発売される。
ということで、今回からアルバム発売日までの「隔週刊サトル」は特別編成。
通常は LAPLAND GARDEN web 会員しか見ることのできない「日々の営み」の中から、アルバム制作の過程を綴ったものを毎週公開する。
傑作が生まれるまでの行程を全ての人へ。
「クリスマスイブの無謀」
本日よりスタジオを我がSTUDIO MODE KEYから都内のスタジオに移してTD。
TD(ティーディー)とは「トラックダウン」の略で、別に「ミックスダウン」あるいは単に「MIX(ミックス)」と呼ばれたりする。
世に出ている音楽作品のうち、99%が「マルチトラックレコーディング(以下MTRと略す)」というレコーディング方法で制作されている。
「トラック」というのは陸上競技でのトラック競技の「トラック」と同じ意味を持つ。例えば「16チャンネルのMTR」と言えば、1本のテープの上に16本のトラックがあって、その1本1本に別々に音を入れられるわけだ。
世界で初めて16チャンネルのMTRを行ったのがあのビートルズ。それからトラック数は24トラック、32トラックと増えていって、今から十数年前に、ビートルズが使っていた頃の8分1程度の幅のテープを使って48チャンネルのMTRが可能となり、それが世界中のスタンダードとなった。
さらにここ5〜6年で一気に定着してしまったハードディスクレコーディングに至っては、トラック数は使用するコンピューターのスペック次第で無限に増やせるようになった。今回の僕のアルバムもハードディスクレコーディングで制作しているため、トラック数を気にすることなくバカスカと録りまくったわけだ。
そうやってレコーディングされた50チャンネル分も60チャンネル分もある音を1つ1つ音量のバランスを取ったり、左右のバランスを取ったりしながら、最終的にみんなの元に届けられる2トラック(L+R )の音源にするのだ。
何十トラックもあったものを2トラックにする。トラックの数を減らす。ダウンさせる。
ということで「トラックダウン」と呼ぶわけですな。
ま、こういったレコーディングの技術的な話というのは、こうやって文章にしてしまうと面倒臭くて読む気もせんわ、という感じになってしまうのだが、実際に音を出しながら解説すれば1発である。
次のGARDEN DISC(LAPLAND GARDEN 会員に年3回送られる未発表音源のみで構成されたアルバム)でやってみることにしよう。
ま、とにかく本日よりTD。
TDというのは、言わばレコーディングにおける最後の編集、調整作業であるから、当然、その日までには録るべきものは全て録っておかなければならない。
しかし、である。
録ってない。
録れていないのだ。
今回収録する予定の11曲中、ボーカルが録れているのが4曲…。
ということでエンジニアの伊藤君がTDの作業をする一方で、僕は隣のブースに自分の機材を持ち込んで我が愛するスタジオ「STUDIO MODE KEY」を再現。そこで残りのボーカルを録る、ということになった。
残り7曲。そのうち全く歌詞ができていない曲が2曲。驚くなかれ、詞も曲もできていない曲が1曲。その他、まだギターを録り残している曲が数曲。
そしてその向こうで伊藤君が通常1日に1曲ペースで仕上げるものを、1日2曲ペースで完成させようとしている。
1日のスタジオ代金はアルバムの売り上げ約100枚分である。
メジャーにいた頃は簡単に「ごめん、あと1日おさえて」とか言ってたもんだったが、もうそうはいかない。アルバムを100枚売るということがどれだけ大変なことか僕はよくわかっている。もちろん、だからといって「やっつけ」で作るつもりは毛頭ない。
限られた時間、限られた予算の中で、それでも今まで以上のものを作ってやる。
僕がメジャーでやっていようと独立してやっていようと、聴いてくれる人には関係のないことだ。
「ま、メジャー離れて作ったんだから、こんぐらいで合格としてやろうか」などという妙な納得のされかたなど御免こうむる。
とにかく、やるしかない。
晩ご飯の時に、スタジオスタッフがクリスマスケーキを差し入れしてくれた。
伊藤君とアシスタントの大竹君、1曲だけのギターダビングのために来てくれていた山村君と4人で「メリークリスマス」。
「アルコールはまずいでしょうから」と「シャンメリー」も差し入れてくれたので何十年ぶりに飲んでみた。
…サイダー。
サイダ?ーでした。
午前3時を過ぎたので本日は終了することにした。
帰り道。年末の工事渋滞でこんな時間だというのに首都高はめちゃ混みだ。こんな時間になんでこんなに車走ってんだよ!家で寝てろよ!(お前もな)
1分でも惜しいこの時期に渋滞で時間を取られる、というのがなんとも歯がゆい。
(2002年12月24日 日々の営みより)
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