シンプルだが単純ではない。
坂本サトル、初の弾き語り「的」アルバム、遂に完成!
●DISC1(self cover disc)
・缶ビール
・始まりの歌
・君に会いたい
・野菜畑の空の青
・話す猫(新曲。guest vocal 松本英子)
・土手に座って
・コーンスープ(初音源化)
・バトン
・アイニーヂュー
・天使達の歌
・大丈夫
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●DISC2(cover disc)
・ギブス(オリジナル:椎名林檎)
・Last Smile(オリジナル:LOVE PSYCHEDELICO)
・胸が痛いよ(オリジナル:リクオ)
・髪を切ってしまおう(オリジナル:加藤いづみ)
・セクシー(オリジナル:下田逸郎)
・見ていてエンジェル(オリジナル:DOROTHY LITTLE HAPPY)
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Produced & Arranged by 坂本サトル
Mixed & Mastered by 佐藤宏明(molmol)
坂本サトル…Vocals、Martin D-35(1967)、Gibson Southern Jumbo(1968)、12str acoustic guitar、Gut guitar、Harp、Bass、Shaker、Tambourine、Triangle
松本英子…Guest vocal(話す猫)
佐藤達哉…Piano(話す猫)
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セルフライナーノーツ
弾き語り「的」アルバム「プレゼント」がようやく完成した。
1999年にソロ活動を始めてから、ほとんどのライブを弾き語りスタイルで行ってきたが、スタジオ収録による弾き語りアルバムはこの作品が初となる。
ただこのアルバム、スタジオ収録とはいうものの「レコーディングにかけた手間とエネルギーがその作品に込められる」という経験から、単にスタジオで淡々と曲を録るのではなく、曲によって収録する場所を変える、という手法をとった。
薄汚れたガレージ、真新しいビルの中にある天井の高いロビー、使われなくなったイベントスペース、キジも現れる実家のリンゴ畑、カエルが鳴きまくる田んぼ、そしてマイスタジオ。そこに機材を運んでセッティングし、納得のいくテイクが出るまでひたすらに歌う…という事をこの1年半、休み休み続けていたのだ。
その場所に漂う空気感が、弾き語りアルバムというモノクロの作品に淡い色と匂いを付けてくれたと思う。
「self cover disc」ついては、弾き語りライブ時の定番曲で、終演後に問い合わせの多かった曲を中心に選曲した。
JIGGER'S SONの「缶ビール」「大丈夫」は2001年に解散してしまったバンドの曲を歌い継いでいくのは自分しかいない、と歌い続けてきた曲だ。2012年にJIGGER'S SONは活動を再開したが、年に1〜2回のライブで歌われるだけでは楽曲に申し訳ないと思い、今もライブのメニューに加えている。
「天使達の歌」「野菜畑の空の青」は実家のりんご畑で、機材が発する熱と電磁波に集まってくる真っ赤なダニと格闘しながら収録した。
その畑は2012年に亡くなった父が眠る墓に見下ろされる場所にある。
ソロ活動を始めた1999年。路上でのライブが様々なメディアで取り上げられ、その頃はほとんどのライブをマイクのない場所でやっていたが、父はそれをあまり良い事だとは思っていなかった。
ちゃんとマイクがあってスピーカーがあって、照明があるところで歌っていただろう、お前は、と。
その年の秋だったと思う。ある番組の企画で実家の畑で「天使達の歌」を歌うことになった。
一応、という感じでその様子を少し離れて父が見ている。
幼い頃から馴染みのある場所での「天使達の歌」は、木々の間を縫うように静かに畑に広がっていき、歌い終えた後、この曲はこの場所で歌うために書いたのではないか?と思うほどの充実感があった。
収録が終わると父がやって来て「マイクのない歌っていうのもいいもんだな」と言った。
その時の事を思い出して、父の墓を見上げる場所でレコーディングしたのだ。
「cover disc」の選曲基準は単純明快「好きな曲」である。
そして、オリジナルをリスペクトしつつ、「これって坂本サトルの曲だっけ?」と思わせるほど自分に染みこんでいる曲。
「ギブス」「セクシー」「髪を切ってしまおう」「胸が痛いよ」はライブでも何度も歌わせてもらっている。回数を重ねながら歌い回しや構成など、少しずつ自己流にアレンジしていって、やがて現在の形となった。
「Last Smile」は初めて聴いたときに一発でやられてしまって、すぐにCDを買いに走った曲だ。英語と日本語が複雑に絡まった歌詞は歌ってみると何とも言えない心地良さがあって、OKテイクが出てからも深夜のスタジオで何度も歌った。
「見ていてエンジェル」は僕が名付け親となったガールズグループ「DOROTHY LITTLE HAPPY」のインディーズ時代のデビューシングルのカップリングとして書いたものだ。プロデューサーなどという怪しげな立場に困惑しつつ、僕の中にあるポップセンスを総動員して今も曲を作らせてもらってる。彼女たちのために多くの曲を書いたが、この曲は書いた時から「いつか俺も歌いたいな」と考えていた。キーに対してファーストとセカンドという2種類のブルースハープを使っているところがこのアレンジのキモでお気に入りだ。
こちらのディスクについては今年3月に青森に作った新しいマイスタジオ「studio mode key blue」で全てのレコーディングを行った。この作品はスタジオ完成記念作品でもあるのだ。
このアルバムを「弾き語りアルバム」ではなく「弾き語り『的』アルバム」と呼んでいるのは、主にこの「cover disc」の制作方法のためだ。いわゆる多重録音により制作された楽曲ではあるが、テイストとしては弾き語り、ということ。
「セルフカバーとカバーアルバムとの2枚組」という発想は制作開始から1年以上経ってから考えついたものだが、結果的に面白い作品が作れたのでは?と思っている。
坂本サトル、初の弾き語り「的」アルバム「プレゼント」。
そう遠くないうちに発表する予定(実現させるぞ!)の6枚目のオリジナルアルバムまでの橋渡し的な存在として、楽しんでもらえたらと思う。
それではライブでお会いしましょう!
2014年9月 studio mode key blue にて
坂本サトル