PRODUCER 石崎光による プロダクションノート


4年振りのアルバムは楽しんでもらえてますか?
なんだか普通にコメントするのもなんなんで
文字数無視で勝手に裏話、サウンドからの視点、思い入れを書きます。
(written by Hikaru Ishizaki)

★01. 音速を超えて
ギター1本のデモから作っていきました。歌詞はもうあったのでハッピーかつポップな方向に仕上げました。メロトロンと12弦のフレーズ、ピアノの8分、POP三原則ですね(そうなの?)
佐藤達哉さんにはうちの LONDON Studio アップライトピアノを弾いてもらってます。今回のアルバムすべてそうですが、リッチな音質よりもより味わい深さ、個性的な音質を目指しました。アコギも数種類弾き比べて決定していってます。
1曲目という案は決まっていたのでスタートボタンを押して弾き語りで始まるという作戦も成功だと思ってます。非常に気に入ってます。
 
 
★02. 1日に例えるなら
これはサトルさんのデモから発展ですね。
若干の構成を短くしつつ、ハードロック色をイギリスガレージサウンドにシフトして。POPな味付けでいづみさん山寺さんコーラス。いづみさんの音量を最大限にあげたのが華やかさをまします。山寺さんはサトルさんの声質と似てるんですねー。お二人とも、いわずもがな素晴らしい歌唱を披露してくださいました。最後の怒濤のウーアーコーラスはサトルさんアイディア。素晴らしい。間奏のKinks風はご愛嬌。サトルさんはいいのかなぁと悩んでましたけどね(笑)
 
 
★03. ループ
これもサトルさんのデモから発展。なるべく隙間をいかしつつ構築。ループ(繰り返し、通常サンプリング等の打ち込みを繰り返す)を使わずあくまで生グルーブで行くと決定。その揺らぎと突発性のパーカッションが良い味を出してます。Per朝倉さんのソロも聞き所です。サトルさん入魂ギターソロも!
まっとさんの昔フュージョン好きだった(サトルさん情報)渋いプレイかっこ良いです。エンジニア佐藤くんも楽器のオンオフのアイディアをたくさん出してくれてます。何故か瀬木さん大のお気に入りの1曲です。
 
 
★04. 何も知らなかったよ
最初の浅森坂予定コーラスとアコギ弾き語りをもらってスタートしました。これも歌詞が出来ていたので世界観を極限まで追い込もうと、無駄な音を一切いれずに歌に呼応する形にしました。最初の浅森坂のこもった質感もモノクロの映画のように。森山さんもライナーに書いてくれてましたがアメリカーナ感を出しつつもうちょっとwilcoよりというか前衛的なデザインで思い出を振り返るようにギターの音も逆回転させたりしてます。
 
 
★05. 君と歌ううた
これは思い出がたくさんあります。事実上サトルさん楽曲を初めてアレンジした曲なんですね。僕が前から思い描いていたサウンドでサトルさんが歌ったらどうなるだろうというのが実現出来た曲です。密かにビートルズとサトルさんは合うなぁと思ってました。サトルさん初競演の松永俊弥さんのドラムが強力です。レコーディングで合わせた時に凄すぎてサトルさん大絶賛&大爆笑してました。かっこよすぎる!ギター的にはサビであえて12弦ではなくダビングで上と下を重ねています。
最後の『いーつーもー』に行く前の小節には僕もサトルさんも相当こだわりがあって佐藤達哉さんに数十回弾き直してもらってます(笑)
 
 
★06. うるる
この曲は前回のアルバムに入る予定だった楽曲でした。サトルさんから「アレンジはこのままでいきたい。歌は録り直す。さぁどうする?」となった時に「じゃあチェロを生にしましょう」と。チェロのラインはサトルさんのデモを参考にしつつ大幅にモデルチェンジ。ボストン帰り(実はサトルさんのCDを持っていた)橋本歩さんの演奏が痺れます。歌、瀬木さんのケーナ、チェロが良い意味で浮かび上がったと思います。
 
 
★07. 君に会いたい
これもアコギ弾き語り歌詞ありでスタート。歌詞があると当然楽ですね。あのイントロが思い浮かんだ時はガッツポーズでした。サトルさんの中に明確にあったビジョン「ダブリンサウンド」をギターではなくピアノでよりノスタルジーを増幅させてます。間奏どうしよっかなー。あ、そういえばハープ使ってなかったなぁ。。。。古い質感ということで歪ませてます。このソロ名演ですね。
ドラムのタムをあえてダビングして壮大感を出してます。
 

★08. 気にしないぜ(ver.2)
これもアコギ弾き語り歌詞ありでスタート。歌詞がこうなので当然アレンジも好き勝手やってもサトルさん気にしないだろ、ってことでこれです(笑)アコギの音質も普通じゃつまらないので歪ませて、エレキギターでやりそうなところを全編オルガン(回転なし)。でもプレイは1コのグリスを出すのでも、かなり考えて気にしましたけど。えぇ。
山寺さん1曲参加だけじゃなにじゃないですか?と提案。山寺さんに快諾して頂きその場で憶えてもらってレコーディング。「間奏になんかやってみて下さい」と。
最初は冗談のつもりが、お聴きの通り素晴らしいテイクが録れたので『この山寺さんの歌、断固いれるべき!サトルさんの笑ってるのも!』と主張。
今回のレコーディング中に最も強くサトルさんに意見した事かもしれません(笑)。最高の出来ですね。ver.1も良いですよ!
 
 
★09. 旅の衆
これはバンドのライブ時のアレンジをベーシックに再構築しました。最初2人で『デュラン・デュラン的ニューウエイブとかどうだろう?』と思ってましたが、結果、「骨っぽいサウンドで風味を加える」ということになってVoxオルガン&謎な音色のギターソロ。途中のオケがフェードアウトするところはTDの時に遊んでたら「あ、それいいんじゃない」ってことでたまたまです(笑)。最後のセクシーな『アーッ、、、』はサトルさんのおふざけですが妙にツボに入りまして。そしたらサトルさんも図に乗って2回やりました。これも「絶対いれるべき!」と意見しました(笑)
 
 
★10. 土手に座って
これはアコギ弾き語り歌詞半分ありでスタート。当初はギター2本のアレンジを作ったのですが、もうちょっとラフのほうが良いねぇって事でじゃあ、古川さんに弾いてもらって一発録りしませんか?と提案。歌詞も僭越ながら提案させてもらって、もっと直接的な内容にフォーカスをしぼったらどうですか?と。そしたらこの歌詞です。素晴らしいですね。そしてこのテイクです。2人の息がぴったりで今聞いてもグッときますね。涙。
 
 
★11. また会える日まで
これはアコギ弾き語り歌詞なし構成なしでスタート。
仮タイトル『ピーナッツ』
サトルさんデモではスネアパターン『タッカタンタッカタン』(サトルさんのHappy Birthday的な)でしたがモータウンビートにしました。難しいベースパターンをまっとさんがリッケンベースで弾きこなしてくれてます。
アコーディオンについては、おおまかなラインを譜面に書いて、いざ佐藤達哉さんのレコーディング当日のこと。「ひかる、、、このアコーディオンだと音域が足りないんだけど…」ゴラァ!!達哉(すいません)!!!!達也さんが持ってきたやつは普通のアコーディオンよりも音域がせまいやつだったんです。。。
それでもなんとか良い感じになりました。
 
 
★12. 僕が生まれた理由
これはサトルさんがCMソングの為に一度完成したバージョンがあって、それをリアレンジしています。リズムの組み替え、ウワモノの選定もろもろ。そして『弦、、、生にしません???』と提案。すると『うそー!できんの?でも色々○○とかねー』とサトルさん。結局無事、生弦でのレコーディングが実現しました。岡村美央ストリングスバンザイ!ありがとう!ゲストコーラス含め総勢40人以上でお届けするこの曲、相当パワーが詰まってますね。
 
4年振りのフルアルバム。凄く充実した素晴らしい内容だと思います。今回の僕の使命は『いかにサトルさんを客観的に聞けるか?』だったと思います。歌入れにしても僕が好きだなぁというテイク、表情、感情をセレクトしていったつもりです。それが皆さんに伝わればいいなぁと思います。こんな若輩者にジャッジをまかせてくれたサトルさんありがとうございます。更に強固な表現を増し続けてるサトルさん。死ぬまで作品を作り続けましょう!そして聖地○○○へ!!!
 
 


★石崎光…ギタリスト、プロデューサー。カフェロンのギタリスト。2006年より坂本サトルのライブサポート。今作ではプロデュース、アレンジ、ギター等で参加。 LinkIcon Blog